プログラム

公募 AC  VA

キャラクタの自律動作制御技術

日時 
9月2日(木) 17:50~18:50
形式 
セッション(60分)
受講スキル

プログラミングの経験があることが望ましい。
ただし、最新技術の概要自体は、プログラミングの知識がなくとも理解できるように説明する。

受講者が得られる
であろう知見

キャラクタの動作を実現するための最新技術

本講演では、筆者が最近行った研究のうち、キャラクタの動作制御に関連するもので、ゲーム開発に役立つと思われるものを、いくつか紹介したい。
近年、ハードウェアは飛躍的に高性能化し、ゲーム開発で用いられる描画手法等については新しい技術がどんどん開発されているが、キャラクタの動作を実現する技術については、実は、あまり大きな進歩はない。現在は、キャラクタが行える動作(短い動作データ)をあらかじめ全て作成しておき、それらをつなげて再生することで、キャラクタの動作を実現することが一般的である。しかし、この方法では、キャラクタは同じ動作の繰り返ししかできない、自律的な動作を実現することが難しい、といった問題がある。
アニメーション技術の研究分野では、このような課題を解決するためのさまざまな技術が研究されており、筆者もそのような研究に取り組んでいる。本講演では、以下のような技術を紹介する予定である。
・キャラクタの動作ルールの自動学習手法
プレイヤーの操作ログを解析することで、プレイヤーと同様の動きを実現するような動作ルールを自動的に学習する手法を紹介する。本技術は、ゲーム開発時に敵キャラクタなどのNPCの動作ルールを作成したり、プレイ中にキャラクタの動きを成長させたりすることに利用可能である。本研究では、機械学習の手法として、サポートベクターマシンを利用している。
・モーショングラフによる回避動作
アニメーションの研究分野で最近注目されている、モーショングラフ技術を使った動作生成手法を紹介する。モーショングラフとは、長時間の動作データから自動的にグラフ構造を構築し、グラフを辿りながら動作を再生していくことで、動作を実現する手法である。現在の方法と比較して、大量の動作データを利用できるため、動きのバリエーションを出すことができる、というメリットがある。本研究では、このモーショングラフを応用して、攻撃を紙一重で避けるような回避動作を実現する手法を開発した。現在は、モーショングラフはまだゲーム開発には利用されていないが、十分に実用性が期待される技術である。
・衝突に応じた動作制御
物理シミュレーションを使ってキャラクタの動作を生成する技術を紹介する。近年、ODE(Open Dynamics Engine)などを使った物理シミュレーションは、ゲーム開発にも積極的に取り入れられているが、キャラクタの動作には物理シミュレーションは適用されていないのが一般的である。これは、人間はただ外部からの力に従って動くのではなく、自律的に体を動かすように力を加えるため、シミュレーションが難しい、ということがある。しかし、これらを考慮して、動作制御や物理シミュレーションを行うことで、衝撃を受けたときのキャラクタのリアクションなど、力学的に自然な動作を生成できる。
筆者は、2008年のCEDECラボで、一度、筆者の研究全体(動作制御技術、操作インターフェース、物理シミュレーション、アニメーションシステム、等)を簡単に紹介させていただいたが、今回は、ゲーム開発者の関心が最も高いと思われる動作制御技術に絞って、より詳しく解説したいと考えている。

  • 尾下 真樹

    尾下 真樹

    九州工業大学

    情報工学部

    准教授

    略歴
    2003年3月 九州大学 大学院 システム情報科学府 博士後期課程 修了 博士(情報科学)
    2003年4月 九州工業大学 情報工学部 講師
    2004年6月 現職

    実績等
    2008年度 CEDEC講演
    2001年度・2002年度 未踏ソフトウェア創造事業 開発者

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