イベント

超速碁九路盤AI対決 エントリー一覧

会場にて。
左から王唯任、三宅陽一郎、
橋本準一(nomitanプロジェクトチーム)、矢野洋平、
万波佳奈の各氏

企画に対するコメント

囲碁棋士 王 唯任

今回、CEDECという場で初めて、囲碁のAI同士の対戦を拝見させていただきました。囲碁は盤上に打ち手の性格が出るゲームだと言われていますが、1手1秒という早碁だったせいか攻めが得意なAIが多かったのが印象的でした。ただその中でも開発者の個性がAIに表れていたものもあり、とても興味深かったです。

AIと佳奈ちゃんとの対局は残念な結果になってしまいましたが、デジタルゲームを研究されている皆さんが、囲碁という4千年間変わらない、アナログなゲームに興味を持っていただけることをとても嬉しく思いました。

囲碁は読みと感覚の両方を必要とするゲームなので、慣れない方には捉えにくい部分もあったと思いますが、その簡単には攻略できないところが囲碁の面白さでもあります。囲碁をもっと覚えていただくとより強いAIも作れるのではないかと思いますので、開発者の皆さんにはぜひ頑張っていただきたいです。

併設して開催していた入門教室にもたくさんの方にご参加いただき、ありがとうございました。ゲーム業界の方々は囲碁を覚えるのがとても早くて驚きました。きっとみなさん、囲碁にも向いていると思います。

このイベントをきっかけに一人でも多くの方が囲碁に興味を持っていただければ嬉しいです。

囲碁棋士 万波 佳奈

囲碁のAI同士の対局は見ていてとても楽しいだけでなく、レベルの高さにびっくりいたしました。内容も戦いの碁が多かったのが特徴だったと思います。また同時にやらせていただいた入門教室も、大勢の皆様が囲碁へ興味を持ってくださり、とてもうれしかったです。光栄な機会をいただき、本当にありがとうございました。

村松 正和 (電気通信大学 情報理工学部 情報・通信工学科教授)

吉岡さんから「1手1秒」というアイデアを伺ったとき、すぐに「これだ」と思いました。

最近、コンピュータ囲碁界ではモンテカルロ木探索という手法が開発され、時間をかければかけるほど、モンスターマシンを使えば使うほど、強くなるようになりました。その方向の研究も大切ですが、それでは「積み重ね」がモノを言うことになり、既存のソフトウェアの独壇場となってしまう。

「1手1秒」はモンテカルロ木探索がちゃんと動くかどうかの限界ですから、他のアルゴリズムで対抗できる可能性が十分ある。そこに、新しいアイデアが生まれる可能性があるのです。しかも、すごく強いプログラムは存在しないので、参入しやすい。そこに目を付けた吉岡氏の眼力に私はただ敬服するばかりでした。

実際にはほとんどのプログラムはモンテカルロ木探索に近いことをやっていましたが、新しいアイデアのプログラムもいくつか現れました。みなさん、モンテカルロ木探索の基礎を押さえながらも、独自の改良を加えていたようです。プログラムの作者がやってきて、いろいろ情報交換をしていたのも印象的でしたし、最終日の決勝・準決勝を見に集まったCEDEC参加者の熱気は凄いものがありました。まずは大成功であったと思います。

予選をやったところと同じブースでは、万波先生、王先生、王真有子さんが囲碁入門教室を開いていました。これが大人気だったのですが、さらにコンピュータ囲碁対決との相乗効果で、当日あのブースの周辺では、「囲碁やコンピュータ囲碁をみんなワクワクしながら見てる」という楽しい状況が生まれていました。このような楽しい状況から、何か新しいアイデアが生まれるとすれば、開催した甲斐があったというものです。

最後にいろいろな方へお礼の言葉を述べさせてください。

万波先生、王先生には、勝敗判定および解説をお願いしました。ありがとうございました。

CEDECの方々には機器の提供、セットアップをはじめ、さまざまな面でお世話になりました。厚く御礼申し上げます。

そして何より参加者のみなさん、イベントを見ていただいたみなさん、盛り上げていただき、ありがとうございました。

伊藤 毅志 (電気通信大学 情報理工学部 情報・通信工学科助教)

1手1秒のコンピュータ囲碁を作る!というAIチャレンジ企画のお話をいただいた時には、我々研究者の立場からは、驚きと戸惑いがありました。ゲーム情報学の研究分野では、出来うる限りの制約の無いマシンパワーで、最大限の強いプログラムを作るという目標で開発することが多く、ゲーム開発者の目線からの提言には、大いに参考になる点がありました。CEDEC事務局、運営に携わっていただいた皆様、素敵なコメントや解説を繰り広げていただいた万波先生、王先生のおかげで、最終日には非常に多くの観衆が集まり、複数のメディアで取り上げられるなど、大変注目を集めるイベントになりました。主催者の一人としてご協力いただいた皆様、及び参加していただいた皆様方に、この場を借りて御礼申し上げます。

思考ゲームAIの分野では、様々な技術が開花しており、先日の10月11日に行われた「清水市代女流王将VSコンピュータ将棋(あから2010)」の対戦では、コンピュータ側が歴史的な勝利を収めております。これまで難しいとされてきた将棋や囲碁のような複雑なゲームにおいても、デジタルゲーム業界でも使えそうなAI技術が多く生まれています。今回の1手1秒という短い思考時間でもモンテカルロシミュレーションという計算コストの高い手法が実用的レベルで使えることが示されたことは、他の多くのデジタルゲームへの一つの指針になったのではないかと思います。

このような対戦・交流の場を通して、先端の情報処理技術が少しでもデジタルゲーム業界に影響を与えることができれば嬉しく思いますし、逆に私ども研究者が業界のニーズに触れることが出来たことは、貴重な体験であったと思います。これを機に、少しでもゲーム業界と大学の基礎研究との距離が縮まれば幸いです。

三宅 陽一郎 (決勝戦司会、株式会社フロム・ソフトウェア)

今回は初めての開催ということもあり、主催者、参加者ともに、手探りの中を進みながら、しかし、何かを確実につかんだという感触があります。囲碁というゲームを通じて、ゲーム産業、人工知能、囲碁業界、アカデミズム、学生の皆様が協力して一つのことを為し得たということも、将来へ向けて一つの大きな成果だと考えています。

これからデジタルゲームにおける人工知能はますます専門化の傾向を強め、ますます強力な学問的基盤を必要とします。囲碁というゲームを中心に形成されて来たプレイヤー・コミュニティ、人工知能研究、研究者コミュニティ、三者の結合は、一つのゲームを中心に実現したゲーム展開・研究の一つの優れた指針であり、これからゲーム産業がゲームを研究・開発して行く上で一つの重要な方向を示していると考えます。今回のイベントがCEDEC内で開催されたことによって、そういった姿や雰囲気をゲーム産業に向けてアピールすることが出来たと思います。しかし、やや、お互い、様子見という感じが強かったので、これからも、どのような形であれ、継続して行くことを望みます。

王 真有子 (囲碁インストラクター)

今回のイベントはとても斬新なものだったと思います。

CEDECがどんなものかもわかっていない、異業種の私達が囲碁のAI対決の解説をしたり、入門教室をやったりする――最初は少し場違いな感じもしていました。

ただイベントに携わっていくなかで、囲碁もデジタルゲームも「ゲーム」というくくりでは同じもの。そしてそれを普及したい、より多くの人に楽しんでほしいという思いも同じなんだとわかりました。

囲碁は4千年の歴史を持つ、いわばアナログなゲームです。

「僕たちは飽きられないゲームを作るために日々努力しているのに、どうして囲碁は変わらずに四千年も楽しまれているのでしょうか」

囲碁のルールを教えた開発者の方に言われたこの言葉がとても印象的でした。

実は囲碁を普及していくうえでも、同様の苦しみがあるのです。伝統的なゲームであるがゆえに敷居が高いと思われたり、本当に楽しいと思うまでに少し時間がかかったり……。

でもアナログにはアナログの良さ、デジタルにはデジタルの良さがあります。またそれらが融合することで新しい世界も生まれるのではないかと思っています。

このイベントをきっかけに囲碁に興味を持っていただいた方には、ぜひ楽しいと思えるところまで囲碁を続けていただければ嬉しく思います。そして、アナログ的な囲碁の楽しさを、デジタルゲームに生かせるような形になればとてもすごいことだと思いますし、逆にデジタルゲームの発想から囲碁というゲームの新しい楽しみ方を提案していただけるようなことがあれば、喜んでやらせていただきたいと思います。

今回は貴重な機会を与えていただき、ありがとうございました。

エントリー一覧

Kasumi

真鍋 和子 ―― 電気通信大学 村松研究室

プロフィール2008年から村松研究室に所属したのをきっかけに、コンピュータ囲碁の研究を始めました。囲碁そのものに興味を持ったのは、父親の影響と漫画のヒカルの碁です。とは言え、実際囲碁を打ち始めたのは研究室に入ってから。現在8~10級くらいでしょうか。自分のプログラムの着手が良いのか悪いのか、せめてそれがわかるくらいには強くなりたいです。
プログラムに関する
一言コメント
モンテカルロ木探索を用いて探索を行なっています。定石データは入れていません。パターンは、シーケンシャルパターンと名づけた、狭い範囲での連続した着手を1つにして扱ったパターンが入っています。例としてツケヒキなどがシミュレーション中に行なわれています。シミュレーションの速度をあまり落とすことなく(10%程度の減少)パターンマッチを行なえることも特徴の一つです。
今回の企画の感想普段は囲碁AIの世界にいないからこそ出せるアイディアを参加者の方から聞けて、すごく有意義な時間を過ごせました。当たり前にダメだと思っていたことを実践されて、それで結果が出せるんだ!と目から鱗な状態もしばしばでした。非常に良い企画だったと思います。来年のまたの開催を楽しみにしています。

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PB002

宮腰 茂明 ―― 無所属

プロフィールソフトウェア技術者(http://sites.google.com/site/miyakosis/)
プログラムに関する
一言コメント
学習されていないニューラルネットワークなんて、やっぱりただのごみデータ出力器でした。
今回の企画の感想会場ではとても恥ずかしい思いをして辛かったです。でもこのようなコンテストは今後もぜひ引き続き開催して欲しいですね。

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不動碁

加藤 英樹 (gg) ―― CGF (コンピュータ囲碁フォーラム)

プロフィールMCTS のパーソナルクラスタ並列を研究しています.
http://www.geocities.jp/hideki_katoh/
プログラムに関する
一言コメント
PC や PS3 の混合クラスタで動くのが売り
今回の企画の感想良い企画だと思います.ただプロ棋士相手に一手1秒はむごい.
追加資料http://www.geocities.jp/hideki_katoh/publications/gpw08-private.pdf
不動碁のこの版が使っているアルゴリズムの説明になっているので,追加資料とさせて頂きたく思います.

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nomitan

nomitanプロジェクトチーム ―― 北陸先端科学技術大学院大学 池田研究室

プロフィール池田心准教授を中心に6名の学生が開発に関わっています
(内二名は修了しました)
プログラムに関する
一言コメント
死活をあまり気にしない楽天的なプログラムです
今回の企画の感想テスト用の公開サーバーがあればよかったかなと思います.
囲碁プログラムには見かけのシンプルさ以上に多くの技術が取り込まれており,人工知能や強化学習などの分野との交流も盛んです.
日本での研究は諸外国に比べて少々出遅れている感がありますが,今回のようなイベントを来年以降も続けていただくことでますますの発展につながることを期待しています.
追加資料Nomitan(Nomitan Project Team) [PDF 64KB]

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Lightningちゃん

John Marrero, Arun Mehta, and Asakura Junko 
―― Square Enix Research Center

プロフィールWe entered the CEDEC Challenge because we are researchers for a game company and naturally are interested in investigating AI approaches to a game such as Go. Furthermore, computer Go is a difficult problem in AI and the CEDEC Challenge added some interesting constraints.
プログラムに関する
一言コメント
Our program does not focus on a single approach but instead integrates multiple techniques (non-Monte-Carlo-based) to select increasingly-better moves as time allows.
今回の企画の感想Both the game of Go and the area of computer Go were new territory for the three of us. None of us could rely on previous experience with the game, so we were learning about it as we were developing our program. Therefore, we found this project to be an interesting learning experience in many different ways.
追加資料CEDEC 2010 超速碁九路盤AI対決まとめ(朝倉順子) [PDF 1.6MB]

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きさらぎ

kc

プロフィール職業プログラマ・クラスタ。普段は低レベルライブラリの開発業務を担当。
プログラムに関する
一言コメント
一言で言うと、地の大きさを greedy に最大化しようとする戦略です。
単純な方法のため、改善点はいろいろあるかと思われるのですが、〆切までには現状が精一杯でした。なお、開発期間は1ヶ月程度です。
今回の企画の感想今回の大会はとても貴重な経験となりまして、このような機会を与えて下さいまして、まことにありがとうございました!
囲碁のプログラミングには前々から興味があり、この度は一から勉強しつつの参加だったのですが、開発を通じて、囲碁の「単純ながらも奥が深い点」にいっそう魅力を感じた次第です。
今回は残念ながら成績が伸び悩んだ結果に終わりましたが、このまま、囲碁を続けて自分自身も精進したいと考えております。最後に、来年も同大会が開催されましたら、是非、リベンジしたいと思います!!

Impromptu

西松 優一 ―― 株式会社スクウェア・エニックス サウンドグループ

プロフィールイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でコンピューターサイエンスを専攻。卒業後、株式会社スクウェア・エニックスにてサウンドプログラマーとして従事。
プログラムに関する
一言コメント
名前の通り行き当たりばったりな箇所が多いAIです。
今回の企画の感想囲碁のAIには以前から興味があったので、素晴らしい機会を提供して下さったことに感謝いたします。
大学でAIの研究をしていらっしゃる方々から貴重なお話を聞けるなど、非常に楽しい思いをさせて頂きました。
ただ、少し残念だったのはCEDECのイベントでありながら、ゲーム業界の参加者が目立たなかったことでしょうか。
次回があるのであれば、ゲーム業界側からの参加者も増えて、もっとイベントを盛り上げることを期待します。

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mnagaku

長久勝 ―― 国立情報学研究所

プロフィールゲームの仕事や、映像配信の仕事をしてました。
今は、国立情報学研究所で、トップエスイーとか、edubaseCloudとか、edubaseSpaceとかやってます。
プログラムに関する
一言コメント
Javaのnngsボットの雛型ぐらいにはなってると思うので、通信は分からないけどJavaでAI書きたい人には使ってもらえるかと思います。
設計がヒドいところが職務上とてもマズいのですが、リファクタリングして教材にするとか言い訳しようと思います。
今回の企画の感想3日目の午後に、王先生に手解き頂いて、囲碁のルールを(なんとなく)理解しました。
次はもっと闘えると(なんとなく)思います。

連絡先:

電談

匿名希望

プログラムに関する
一言コメント
まだまだ発展途上です。出直してきます。
今回の企画の感想大会当日は参加者どうしで自己紹介などの時間があるのかと思っていましたが、拍子抜けなほど何もやることがありませんでした。
参加者どうしで個人的に交友を深めよ、という意図だったのだと思いますが、どなたが囲碁の参加者なのか、一見して分からないので困りました。
来年も囲碁の企画を実施することを期待しています。
リベンジの機会を与えてください!!

連絡先:

Hope

池畑 望 ―― 電気通信大学

プロフィール電気通信大学
プログラムに関する
一言コメント
UCTを使用。呼吸点の更新にBitboardを使用。
今回の企画の感想運営の皆様がとても頑張っていたと思います。お疲れ様でした。

連絡先:

Rock

Natsuki Iwakawa ―― 電気通信大学院

プロフィール電気通信大学でプログラミングを学び、学部3年次から囲碁プログラム「Rock」を作成する。
プログラムに関する
一言コメント
お恥ずかしい限りです。でもがんばってます。
今回の企画の感想大変なこともありましたが、面白かったです。多くの新生プログラムを見れたり、強豪プログラムとプロの対局が見れたりと充実した3日間でした。その上、ゲーム業界の最先端で活躍している方々の講演が聴け、お話しする機会があり非常に貴重な体験となりました。今回の大会を企画してくださった事務局と、大会で助けて頂いた多くの方に感謝を申し上げます。

木を逆立ちして登ってみた

尾形 泰彦 ―― 東京工業大学

プロフィール見た目にだまされる人が多いですが、ただの学生です。
プログラムに関する
一言コメント
CPUをぶん回すことに主眼をおいたプログラムです。
そして、今大会一番の問題児。
弱いのは、「とある欠陥」のせいですが気づけますか?
今回の企画の感想1秒でも上位にモンテカルロがくるのに正直驚きました。
19路を1秒ならばモンテカルロ封印になるのか興味があるとろですね。

連絡先:

Tombo

矢野 洋平 ―― 某電気メーカーの社内SE部門

プロフィール電気通信大学の村松研究室のOBです。
私の研究テーマは囲碁プログラムではなかったのですが、同期や後輩が囲碁プログラムを作っているのを横で見ている間に自分でも作ってみたくなり、社会人になってから趣味としてTomboを作り始めました。
平日はあまり時間がとれないので、土日に開発をすることが多いです。
プログラムに関する
一言コメント
名前の由来は、
 「矢野+囲碁」 → 「矢碁」 → 「ヤゴ」 → 「トンボ」
なのですが、
 ・囲碁では眼がたくさん有るのは良いこと
 ・視野がひろい(大局観とかがありそう)
という、後付けの理由もあったりします。
今回の企画の感想王先生&万波先生に解説をして頂くなど、かつてない体験ができた事が嬉しかったです。
あと、1手1秒は特殊ルールでしたが、対局が沢山でき楽しかったです。
来年も開催されることを期待しています。

連絡先:

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