CEDEC 2018 運営委員長インタビュー
~20年目のCEDECでぜひ講演を
2018年8月22日から24日の3日間、パシフィコ横浜で開催される「 CEDEC 2018(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2018)」。現在、セッション講演者を4月1日まで募集中だ。
「CEDEC」は今年で開催20周年を迎える、日本最大のコンピュータエンターテインメント技術カンファレンスである。もとは「ゲーム開発者向け」としてスタートしたが、昨今のゲームから始まったデジタル記述の多様化から、映像、自動車、医療、学術研究に至るまで日本の様々な最先端技術が集まるイベントとなった。
本稿では、昨年より運営委員長を勤める中村樹之氏にインタビューを行った。ゲーム技術のトレンドとCEDEC20周年にかける思い、CEDECがゲーム産業にもたらす効果についてヒアリングした。
――まずは自己紹介をお願いします。
中村氏 : CEDEC運営委員長の中村です。株式会社セガゲームスで開発機材やツール・ミドルウェアなどの開発環境をサポートする部署のマネージャーを務めています。
――まずは昨年のCEDEC 2017を振り返りたいと思います。どのような変化がありましたか。
中村氏 :昨年大きな反響があったのは、やはり『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のセッションですね、複数の分野で8つ行っていただいたのですが、いずれも会場が満席となり、内容も充実した素晴らしいクォリティのセッションでした。まさに日本のトップタイトルの開発事例ということで、聴講した皆さんの評価も大変高いものとなりました。また、2016年に引き続き、VRやAR、新しいデバイスなどに関しても色々な事例が出てきました。今年は新しいデバイスを使ったコンテンツの、より具体的な事例が出てくるのではないかと思っています。 今までは実験的なものが多かったのですが、例えば「ビジネスでこう使っています」など、具体的なものや、より深掘りした内容が出てくるのではないでしょうか。
――VRやARは今年のテーマ「Fantasy becomes Reality」と絡んでくると思うのですが、それらの分野をふまえて、テーマを決めたのでしょうか。
中村氏 :今年はCEDECが20周年になるということで、過去から現在、そして未来のことを含めたキーワードを考え、「Fantasy becomes Reality」というテーマになりました。
20年前、CEDECが始まった当初は、様々な新しい技術、特に3Dグラフィックの技術が登場し、ゲームにとって新しい時代の始まりでした。その頃は、みんなが「ああなったらいいな、こうなったらいいな」という夢を見て、その夢に向かって試行錯誤していました。しかし、当時はまだハード性能に限界があり、夢に描いていたようなリアルな体験といったものは実現することができなかったと思います。当時の業界では、その制約の中でいかにしてゲームを魅せるか、といったところで勝負をしていました。
しかし、今はハード性能の進化や、ネットワーク技術の向上、スマートフォンなど新しいデバイスの登場によってその頃に描いていた夢が現実になりつつあります。スマートフォンに関しては、当時はこんな小さなサイズで高い性能を持つデバイスが登場するなど誰も予想できなかったと思います。例えば、『ポケットモンスター』が初めて発売された当時は、ゲームボーイの白黒画面で遊んでいましたが、今では『Pokémon GO』が登場し、あれを現実世界に持ち出して、よりリアルな体験ができるなど、まさに夢のようなことだと思います。
我々が子供の頃に夢に描いていたことが、今では簡単にできるようになり、また今から20年後には一体どうなってしまうんだろうという思いもありますね。
――今年特に注目しているトピックはありますでしょうか。
中村氏 :AIの分野はここ数年でかなり活用事例が増えてきており、特に注目しています。ゲームの中でAIを使うことももちろんですが、ゲーム開発や運営の現場においてAIを活用する事例も増えてきており、今後も様々な形でAIを活用したゲームが増えていくのではないかと思っています。
CEDECではゲームのグラフィックや、ハードの処理技術の進化を常に追ってきたと思うのですが、専門的なエンジニアもある程度成熟し、分業化も進んでいることから、グラフィック以外の技術も盛んに研究開発が進むようになりました。今年の講演でもAIを実際にゲームに活用した事例が多く出てくると思っています。
現在でもすでに、Siriなど十分実用に耐えうるAIは多く登場しています。そこから例えばxR系(VR, AR, MR技術)と融合して新しいAI活用方法が生まれたりなど、AIが更に深く利用される世界はすぐにやってくるのではないかと考えています。
――応募を考えている方へ向けて、CEDECで登壇することのメリットを教えてください。
中村氏 :最大のメリットは、自分の持っている考えやノウハウを外に出すことによって、自分と同じような考えを持っている人とのコミュニティが広がることです。講演を聞いた人が自分の考えに賛同したり、意見を言ってくれたり、どんどん人の輪が広がっていくと思います。
そしてやはり、他の人の意見をもらえる場になるということです。技術者やクリエイターは、どうしても一人だけでは勉強できることに限界があるため、こうした場でもらえる意見はとても貴重なのではないでしょうか。そうしたフィードバックは多ければ多いほど技術者やクリエイターにとっては有意義だと思います。自分が持つものを外に出すことで、より大きくなって自分に返ってくるのではないかと思っています。
――応募を考えている方に、求めていることはありますか?
中村氏 :「自分はこういうことをうまくやりました」といったお話ももちろん聞きたいのですが、「こんなことにチャレンジしたけどうまくいかなかった」といったような失敗談も募集しています。むしろ、そのような失敗談から得る気づきの方が多いのではないかと思います。また更に、「失敗してしまったから、こうしていこうと思う」というような、失敗を踏まえた今後のお話なども聞きたいです。
もうひとつ、CEDECは日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンスですが、日本の技術者やクリエイターがこれだけ集まる場は他にはありません。ぜひ、日本ならではの良さを活かした作り方を聞きたいですね。それらを共有し、世界的な競争力を持てるようになればいいなと思っています。海外のトレンドも取り入れつつ、これぞ日本のゲームの開発技術、ゲームデザインと自信を持って語ってほしいです。
――最後に、公募を考えている方へ向けて、メッセージをお願いします。
中村氏 :今年、2018年はCEDEC20周年となりますが、今まで継続して公募して下さっている方もどんどん続けて公募していただきつつ、初めて公募を考えている方も、ぜひともチャレンジしてみて欲しいと思っています。
――ありがとうございました。