CEDEC 2018 ビジュアルアーツ分野インタビュー
~プロシージャルやキャプチャー技術による効率化と、アーティストの個性を出すテクニックの共有を
2018年8月22日から24日の3日間、パシフィコ横浜で開催される「 CEDEC 2018(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2018)」。現在、セッション講演者を4月1日まで募集中だ。
本稿では、ビジュアルアーツ分野における最近のトレンドと公募で求めるトピックなどを、当分野担当の麓一博氏と 大下岳志氏に伺った。
――まずは自己紹介をお願いします。
麓氏 : CEDECのビジュアルアーツ分野の主担当をしています。株式会社セガゲームスでテクニカルアーティストということでデザイナー向けの環境開発に携わっています。
大下氏 : CEDECでビジュアルアーツ分野を担当しています。株式会社トーセでテクニカルアーティストおよびプロジェクトマネージャーをしています。開発の効率化や、クオリティの均一化に関する仕事が多いです。
――ビジュアルアーツで扱う分野について教えてください。
麓氏 : ビジュアルアーツ分野では、ゲームの見た目に関する分野を広く扱っています。またビジュアルアーツ分野ではゲームに関することだけでなく、コンピューターを使ったビジュアル表現全般を視野に入れています。映像作品やアニメ、あるいはイベントで使用するような映像など、様々なコンテツの技術や表現技法などをゲームに落とし込んで、実際に活用してもらうことを目標としています。
――ビジュアルアーツ分野における最近のトレンドはありますか?
麓氏 : ビジュアルアーツ分野の「求めているトピック」でも大きく書かせてもらっていますが、最近最も注目されているのはプロシージャル技術に関することです。最近のゲームは必要とされるアセットの量が膨大になっているため、より効率よくアセットのバリエーションを生み出すために、ゲーム業界のアーティストの方々はプロシージャル技術に活路を見出しているのではないでしょうか。
既に、実際にプロシージャル技術を開発に組み込んでいる会社さんも多いと思うので、プロシージャル技術を使った開発事例のお話も聞いてみたいですし、更に未來を見据えたプロシージャル技術の新しい活用方法などに関するお話も、将来どのように発展していくのかというのが垣間見ることができて面白いのではないかと思います。
大下氏 : それに加えて、最近様々な分野において注目されていますが、AIもプロシージャル技術ととても相性がいいと思うので、何かしらAIとプロシージャル技術を連携させた新しい試みの話も聞きたいと思っています。
――今年の講演に求めているトピックはありますか?
大下氏 : 3Dグラフィックスにおけるキャプチャー技術全般です。以前からテクスチャのキャプチャーやモーションキャプチャーなどは良く行われていましたが、近年では3Dモデルそのものもキャプチャー技術を使って生成したりといったことも一般的になってきています。
先ほどお話したプロシージャル技術もそうですが、今のゲーム業界のアート分野では良い意味で「いかに手を動かさずに作るか」といったことが求められていると思いますので、より楽に品質高くという、効率的な開発のための新しい知見や情報が集まると良いなと思っています。
麓氏 : プロシージャルやキャプチャー技術は、よりリアルなアセットの大量生産が可能になる技術だとは思いますが、そこに更にアート表現における作家性や個性などを加える技術や手法に関する知見は、実際にそれをやったことのある方でないとお持ちでと思います。そうしたノウハウに興味がある方も多いと思うので、是非ともCEDECでご自身の持つ技術や手法、事例を発表し、来場者と語り合っていただければいいなと思っています。
麓氏 : もうひとつ、テクニカルアーティストの人材育成面に関するお話です。若手のテクニカルアーティストをどう教育するか、という話や、若手自身がどういうステップで成長していったのか、といったようなお話を聞きたいです。
大下氏 : テクニカルアーティストの育成に関しては、以前はもともとエンジニアやアーティストだった方がテクニカルアーティストになるという事が多かったと思うのですが、最近では始めからテクニカルアーティストを目指すという方も増えてきています。彼らは「第二世代」と言えるかもしれませんが、最初の世代のテクニカルアーティスト達が切り拓いてきた道をどう進むか、どうロードマップを引いて自分たちが成長していくか、という講演があると面白いかもしれません。
CEDEC 2018 ビジュアルアーツ分野で求めているトピック
――応募を考えている方へ、気をつけてほしい点はありますか?
大下氏 : 私がお伝えしておきたいのは、まずアートというものは人による表現である以上、途中まで同じような過程を辿っていても、必ずどこかで差異が生じてくるものなので、「これはもう世の中に出てるから」という理由で講演を諦めてほしくないということです。また講演を聞いている方によって自分が得られなかった新しい視点を見つけることができるかもしれません。
麓氏 : 大下さんがおっしゃった通り、制作過程における手法や工夫なども含め、アートに息づく考え方や魂のようなものはそれぞれのアーティストさんや作品によって大きく違います。例えば一見同じ表現をしているようなものでも、あえて両者を比べてみたりすることで、新しい気付きが得られるということもあります。
そしてもうひとつ、応募の際に気をつけてほしいことなのですが、ビジュアルアーツ分野は見た目に関する分野なので、サンプルの画像や動画はとても重要です。文章だけではどうしても、どういったことを話したいのか完全にはイメージが伝わらないこともあります。未完成のものや研究途中のものでも構わないので、講演内容がイメージできる絵を添付して頂けるととても助かります。
――最後に、応募を考えている方へメッセージをお願いします。
麓氏 : CEDECはゲーム開発エンジニアのためだけのカンファレンスというイメージが強いかもしれませんが、ビジュアルアーツ部門では、例えば絵を描くための技法といったものも募集しています。アーティストさんはそれぞれの持つ独自のテクニックであったり工夫、あるいは哲学などがあると思います。そういったものをCEDECで講演し、広く共有いただくだけでも、同じことに悩んでいる方や同じ考え方を持っている方などにとって非常に参考になるかと思います。また、イラストレーターさんなど、技術に直接携わっていらっしゃらない方でも、CEDECでご自身の作品や独自の手法や、考え方を講演していただくと、聴講者に気づきや学びが生まれると思っています。
大下氏 : ゲームにおけるアート制作は大きく「発想」と「表現」と「技術」に分けられると思っています。まず根底に「こういう絵が作りたい」という発想があり、それを表現手法によって具体化した上で、どのような技術を用いてプロダクトに落とし込むか、という三段階の過程です。技術の過程の話ばかりクローズアップしてしまいましたが、発想や表現などといったこともアートの肝であるので、それをどう試行錯誤して見出したのかといったことにも非常に興味があります。そのような、発想や表現に関するテクニック、考え方などに関することも是非ともお話してもらいたいです。
――ありがとうございました。