CEDEC 2018 サウンド分野インタビュー
~進化するゲームサウンド事情と、ニッチな技術話の両面を期待
2018年8月22日から24日の3日間、パシフィコ横浜で開催される「 CEDEC 2018(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2018)」。現在、セッション講演者を4月1日まで募集中だ。
本稿では、サウンド分野における最近のトレンドと公募で求めるトピックなどを、当分野主担当の増野宏之氏に伺った。
――まずは自己紹介をお願いします。
増野氏 : 株式会社CRI・ミドルウェアの増野です。CEDEC運営委員会には2012年から参加しており、現在ではサウンド分野の担当をしています。
――サウンド分野で扱っている内容について教えてください。
増野氏 : サウンド分野では、エンターテインメントにおけるサウンド全般の制作技術や手法などについて取り扱っています。具体的には、インタラクティブな音響演出や、楽曲や効果音の制作、またはその収録・編集に関すること、サウンドアセットの制作から実装までのワークフローの管理、そして主にVRにおける空間音響処理技術などです。
――最近サウンド分野において注目しているトピックや、今年求めているトピックを教えてください。
増野氏 : 今年注目しているトピック、求めているトピックとしては、5つあります。
まずはVRやARなど、新しいデバイスに対応したサウンドデザインに関してです。例えば昨年は、VR作品の「サマーレッスン」が、超近距離までキャラクターが迫ってくる場合において臨場感を出すためにどのようにサウンドデザインを行ったか、という講演がありました。そのようなVRにおける立体音響技術や演出などは、登場してから2、3年経ち、そろそろ成熟してきたのではないかなと思っています。今年は実際に立体音響技術を使った事例や実験成果などの講演に期待しています。
2つ目はインタラクティブミュージックに関してです。ゲーム音楽は映画などの映像作品とは異なり、定められた筋書きに従って流れるということはあまりありません。そのようなゲームにおいて、プレイヤーの操作や行動によって音楽が変化する演出のことを、インタラクティブミュージックと呼んでいます。そのインタラクティブミュージックを実現するための動的な音楽の遷移や自動生成技術、合成技術などに注目しています。インタラクティブミュージックはゲームならではの音響演出であり、全世界的にも興味が持たれていますので、ゲーム音楽を語る上では絶対に外すことができないトピックだと思っています。
3つ目は空間音響に関する技術についてです。例えば、部屋の大きさによって残響時間がどう変わるか、といったことや、遮蔽物によって外からの音がどのようにこもって聞こえるか、などといった、音のリアリティを実現するための空間音響技術や表現手法などに関することを、実際の事例や挑戦したことなどを交えてお話してほしいです。
4つ目は、ゲームのサウンド制作における開発ツールや開発環境・手法に関することです。最近はそれらも非常に多種多様になってきており、進化も激しい分野だと思いますので、新しい概念の提案や、新しいツールを使ったワークフローの事例などを聞きたいです。
5つ目はスマートフォンゲームにおけるサウンドの作り方についてです。スマートフォンゲームにおいては、やはり従来のコンシューマゲームのサウンドとは作り方が異なると思います。またサウンドの作り方以外にも、サウンドアセットの管理など、スマートフォンゲームならではのノウハウに関して是非とも共有してもらいたいと思っています。
CEDEC 2018 サウンド分野で求めているトピック
――さらに、これから注目されそうな新しい技術などはありますか?
増野氏 : ひとつは、従来の音響信号処理とはまた違った、人間の感覚の部分でしか捉えられなかった、あるいは人間の感情などに基づいた新しい音響信号処理技術や、音声認識および音声合成とそれらを使った演出分野に関してです。
もうひとつ、VRやARとも関連する、アンビソニックス、特に最近注目されている、ハイヤーオーダーと呼ばれる3次以上のアンビソニックスを活用した事例を聞きたいです。また、頭部伝達関数(HRTF)というものを、どのようにカスタマイズ、あるいはパーソナライズしたりするか、ということについてですね。これらは最近のゲームサウンド業界において最も進歩が激しい分野で、興味を持っている方も多いと思いますので、是非お話してほしいです。
さらに、ゲーム実況やeスポーツなどに向けたサウンドデザイン、およびその対応技術に関しても興味がありますね。
――最後に、応募を考えている方へ向けてメッセージをお願いします。
増野氏 : CEDECは、今までの研究を振り返ることができるとても良い機会だと思います。講演するために今自分が研究していることなどを取りまとめて、人に向けて分かりやすく説明するという過程において、自分がその分野に対してどれだけ理解度があるかということに改めて気付くことができます。
さらに、CEDECではとてもニッチな分野であっても、非常にたくさんの人が講演を聞いてくれて、さらに多くのフィードバックを得ることができ、技術者同士が本気で話し合うことができる数少ない場でもあります。「こんな分野自分しか興味を持っていないだろう」などと考えずに、自分の持っている知識を外に出して共有することによって、それが多くの人に伝わり、将来的には業界全体で使われるものになるかもしれません。是非とも臆さずに応募をして頂きたいです。
――ありがとうございました。