CEDEC 2017講演者公募のTIPS ~詳細は隠さず丁寧に! 自身の成長のためにも積極的にご応募を
8月30日から9月1日の3日間にわたりパシフィコ横浜で開催される「CEDEC(コンピュータ・エンターテイメント・デベロッパーズ・カンファレンス)2017」では、セッションの講演者を、2月1日から4月2日まで募集している。
今回はCEDEC 2017の講演者の応募書類について、書き方のコツや注意点を運営委員会で副委員長を務める齊藤康幸氏に伺った。講演を採択されやすくするためにも、応募の前にぜひご一読いただきたい。
――まずは自己紹介をお願いします。
齊藤氏 : 株式会社ヘキサドライブで、東京開発の責任者をしています。CEDECには2012年から関わっていて、今回から副委員長と、セッションワーキンググループのリーダーを務めています。
――セッションワーキンググループでは何を行うのですか?
齊藤氏 : CEDECで行われるセッションをまとめています。セッションの大半は公募で決まりますが、今年聞きたい話題について講演していただける方を招待したり、学会を招待してコラボレーションすることもあります。それらを含めて、どういうセッションを開くかを取り扱うグループです。展示を扱うインタラクティブセッションについては、専門のワーキンググループを作って分担しています。
――CEDECに応募したいと思った方は、まずどうするのがいいでしょうか。
齊藤氏 : 昨年のCEDEC 2016でどういう内容のセッションがあったのか、公式サイトのセッションリストを見ていただくのがいいと思います。セッションでどういう内容が語られ、どういう知見が得られるかが書かれているので、「CEDECではこういう内容がふさわしい」ということが肌感覚でわかると思います。
――昨年のCEDEC 2016のセッションは昨年採択されたものですから、ある意味正解が並んでいるわけですね。次に応募の手順を教えてください。
齊藤氏 : CEDEC 2017の公式サイトにある公募フォームに、セッションの題名と、内容や得られる知見などを書いていただきます。フォームの記入のポイントについては、「カレーの作り方」を例にして書いたものがありますので、そちらもご覧ください。
公募フォームの書き方 良い例・悪い例
http://cedec.cesa.or.jp/2017/koubo/example.html
齊藤氏 : 記入の際に最も重要なことは、「詳細」欄に、セッションで話す内容をつぶさに書いていただくことです。
――「詳細」というのは、公式サイトのセッション一覧を見ても載っていないですよね?
齊藤氏 : はい。セッション一覧では内容が短文にまとめられていますが、公募フォームの「詳細」に書かれていることは掲載しません。ここにより詳しいセッション内容、そして内容に価値があるということを、しっかりと書いていただくことが重要です。「こういうことを話します」と期待を膨らませる書き方を「詳細」の方でもされていることがよくあるのですが、それでは当日何を話していただけるのかわからないので、価値があるのか判断できず、採択できません。そういったことは「内容」の方に書いていただいて、「詳細」にはその具体的な事柄を書いていただけると審査しやすいです。内容は良さそうだけれど、具体的に何かわからないので採択できないというのは我々としてももったいないので、「詳細」欄を具体的に書くことを最重視していただきたいです。
――CEDEC 2017の応募は4月2日までですが、講演するのは8月末から9月頭とかなり間が開きます。応募した時と状況が変わり、同じ内容で話せないこともあると思いますが、その辺りを心配される方に対してはいかがですか?
齊藤氏 : 応募時の内容を踏まえていただいて、実際には今こうなっていますという最新情報を出していただくのがいいと思います。聴講者の皆さんには、それが成功であっても失敗であっても、情報としては価値あるものになります。自分たちがやってきたことがどういった結果につながったのかという部分を分析してお話しいただけると非常にいいと思います。応募の時には、成功事例など何か伝えたいことがあったはずなので、それも失わずに添えていただければ、応募時と内容が変わったとしても、最新情報も含めてアレンジしていただいて構わないことにしています。
――審査はどのような流れで行われるのですか?
齊藤氏 : 審査は1次審査と2次審査があります。1次審査はエンジニアリングやビジュアルアーツなど各分野の専門家であるセッションプロデューサーにお願いして、今、プロの現場にとって価値あるものかを審査します。誰から来たものか全くわからないブラインド審査になっていて、内容だけで価値があるかどうかを確認しています。
――公平性を重視されているのですね。
齊藤氏 : 公平性を大事にしないと、応募する価値があるのか、またセッションの質がどうかということが担保できないと思いますので、重要視しています。
――具体的にはどのように審査されるのでしょうか?
齊藤氏 : 1次審査では、応募された内容を見て点数を付けていきます。採択か不採択かはここでは決めず、2次審査に回します。
――2次審査はどのように行われますか?
齊藤氏 : 2次審査は内容をオープンにして行います。全分野の委員全員が1泊2日の合宿に参加し、応募されたものを全員で一通り見ます。数は採択するものだけでも百数十件になりますが、短い時間の中で全ての応募に対して議論し、採択するかどうか判断します。内容が詳しく書かれていないものを議論する時間的余裕はありませんので、やはり応募の際に詳細をしっかり書いていただくことが大切です。
――合宿はいつ行うのですか?
齊藤氏 : 例年4月中旬の土日です。公募を3月末または4月初頭の段階で締め切り、私とワーキンググループのスタッフで審査振り分けをします。その後、審査に割り当てられたセッションプロデューサーの皆さんが審査する時間を1週間ほど取らせていただいて、1次審査の結果が出たらすぐ合宿です。
――ボランティアでやられているとは思えないほどハードスケジュールですね。
齊藤氏 : 確かにこの期間は忙しいですが、今、皆さんがどういうところに価値があると感じているのか、流れを俯瞰して見られるのは、運営委員をやっていてよかったなと思うところです。採択したセッションによって、聴講される方は知見を深めていただけるし、講演される方は自分の経験をまとめ直したりして、ご本人の成長につながります。まさに業界の成長につながるところをやらせていただいていて、やりがいがありますよ。
――採択するセッションが決まったら、タイムテーブルの作成ですね。
齊藤氏 : 同じ分野で興味が沸くであろうセッションを同時刻に並べてしまうと、どちらに行こうかと困ってしまうので、なるべく興味の分野が時系列で縦に並ぶように組んでいます。エンジニアリングなどはセッションの数が多いですが、スマートフォンとハイエンドコンソールで分けるなどして、興味の分野がかぶらないように並べます。その後、セッションプロデューサーに並びを見ていただいて、意見を聞いて入れ替えたりもしています。
――ということは、公募のセッションに関しては、いつのセッションになるかわからないのですか?
齊藤氏 : はい、申し訳ないのですが、セッション時間の希望や調整は基本的にお受けしていません。公募セッションについては、3日間のうちのどこに入っても大丈夫なように考えていただくのが基本になります。どうしても予定が入って無理だという場合は、可能な限り調整してみますが、難しい場合にはご辞退していただくこともあります。予めご了承ください。
――では最後に、応募を考えている方にメッセージをお願いします。
齊藤氏 : CEDECは業界全体で技術を向上させていくことが目的の1つですが、講演することで自分の中で考えが整理されますし、周囲に同じ興味を持つ仲間が集まってきます。講演を自分の成長やキャリアにつなげるような意識で応募していただければと思います。応募数が増えると我々も大変にはなりますが、応募が多い分だけCEDECの質が上がり、来ていただける方にもご満足いただける場になると思います。業界を盛り上げるためにもご協力いただけるとありがたいです。
――ありがとうございました。
石田賀津男(フリージャーナリスト / http://ougi.net)