CEDEC運営委員会インタビュー

CEDEC 2017エンジニアリング分野インタビュー ~トレンドはVRとAI。ネットワークを含めた技術話の応募を!

 8月30日から9月1日の3日間にわたりパシフィコ横浜で開催される「CEDEC(コンピュータ・エンターテイメント・デベロッパーズ・カンファレンス)2017」では、セッションの講演者を、2月1日から4月2日まで募集している。

 今回はCEDECのエンジニアリング分野におけるトレンドや、CEDEC 2017の公募で求めるトピックなどを、運営委員会の津田順平氏、佐藤良氏に伺った。

津田順平氏(左)、佐藤良氏(右)

津田順平氏(左)、佐藤良氏(右)

――まずは自己紹介をお願いします。

津田氏 : 株式会社コーエーテクモゲームスで、物理シミュレーションやモーション制御など、シミュレーション的な技術をゲームに応用するための開発、研究を十数年やっています。CEDECでは2008年から関わっていて、運営委員であると同時に、CEDECでは5度講演しています。

佐藤氏 : 私もCEDECで何度か講演した後に、運営委員会に誘われて参加しました。ネットワーク分野を担当して、今年で4年目になります。

――エンジニアリングの分野ではどんな内容を扱いますか?

佐藤氏 : コンピュータエンターテイメントシステムに関する技術を扱う分野としています。細かい内容はCEDEC 2017のセッション分野定義に書いてありますが(http://cedec.cesa.or.jp/2017/koubo/field.html)、今年は少し変えて、全ての項目に"技術"と付けました。

津田氏 : 以前はサービスなのか運用のノウハウなのかなど、境界がぼんやりしていたので、今回からはもう少し明確に、技術を扱いますという形ではっきりさせました。

――ネットワークに関してもこの中に含まれるのですね。

佐藤氏 : 一昨年からエンジニアリングの分野に含んでいます。ネットワーク分野は、現在は技術だけでなくビジネスなど他の分野とも切り離せないものになっているので、各分野にちりばめました。エンジニアリングではネットワークに関する技術にフォーカスしています。

津田順平

――最近のCEDECにおけるトレンドと、今年注目される内容を教えてください。

津田氏 : 2~3年前まではレンダリング技術が重要なテーマになっていましたが、昨年はVRとAIでした。VRに関しては、VR Now!という形でCEDECとしてフィーチャーし、充実したセッション構成になりました。AIに関しては、ゲームの思考ルーチンの別称としてのゲームAIというニュアンスがありましたが、昨年のCEDEC 2016におけるAIは、サウンド、CG、モーションなどの分野にも絡めた話題が出てきました。

――AIの使われ方が広がってきたわけですか。

津田氏 : そうですね。それと開発者の間に、取り組まねばならないという意識が広がってきたのだと思います。機械学習に代表されるアカデミック分野のAIのイノベーションはすさまじく、様々な産業領域でその導入が大きなトレンドとなっています。エンターテインメントの世界でもその潮流は無視できません。今年の募集の柱として、AIに関しては積極的に応募していただきたいと考えています。

 AIやVRは、業界の構造を大きく変えるような技術だと思います。そういう破壊的な技術が立ち上がる時は、1社がクローズドで頑張っても限界があります。特にAIは、ディープラーニングなどで各所で話題にはなっていますが、その内実はある種"金鉱掘り"の様相で、本当の人工知能を作るための系統立った手法が確立されているわけではありません。業界で情報をよりオープンにして取り組んでいかないと、それほどポジティブな結果は得られない気がします。CEDECをそうしたオープンな情報交換ができる場として活用していただきたいと思います。

――ディープラーニングは今年のキーワードになりそうですね。

津田氏 : ただ実際に成功しているAIは、ディープラーニングを強化学習や遺伝的アルゴリズムと結び付けたもので、ディープラーニングはあくまでAIの1要素です。ですからディープラーニングという言葉にとらわれず、様々なタイプの人工知能技術を広く求めています。今はAIの理論だけではなく、具体的に使える処理系の形でリリースされているので、以前と比べると敷居が低くなっています。そうした処理系にまつわるノウハウに関しても、どんどんお話しいただけると、これから参入しようとしている方々には有益な情報になると思います。

――VRに関してはどうお考えですか?

津田氏 : 昨年のCEDEC 2016では十数本のセッションが立ち上がりました。スタジオがあり、プラットフォーマがあり、学術的研究者の方がいて、様々な分野から知見を持ち寄ってセッションを構成していました。異業種、異分野がVRという軸で情報を交換し合うのは素晴らしい形だと思うし、今年もそういう形で進めていけたらと思います。

――昨年はVR元年と言われましたが、今年はどこに注目されますか?

津田氏 : "ゲームVR"の元年は今年かなと思っています。PlayStation VRという形で主力のプラットフォームが立ち上がったのは、昨年のCEDEC 2016の後でした。昨年までは開発者がどう作るかという話でしたが、今年はユーザーがゲームVRをどのような形で受容したかという情報が初めて発信できます。VRをリリースした後のポストモーテム的なセッションも期待したいですね。

佐藤良

――ネットワーク系ではいかがですか?

佐藤氏 : ここ最近はサーバーサイド技術の事例が多く発表されていて、負荷分散手法やデータベースのノウハウの注目度が高いです。またセキュリティ関係でSECCONさんから応募がありまして、一昨年からゲームのチートチャレンジを開いています。攻撃する側の手法を知っていないと防衛はできませんが、チートやクラックを公にする場はなかなかありません。CEDECという場を使ってこういうセッションがやれているのはいいことだと思います。

 あと昨年くらいから、オンラインゲームのエンジンやゲームサーバーを利用したもののセッションが増えてきています。クラウドの利用も多く、クラウド側のGPUやAIを使った話も少し見えてきたのが特徴です。

――CEDEC 2017で求める講演はどんなものがありますか?

佐藤氏 : 昨年から引き続き、デジタルコンテンツやサービスを不正行為から守る技術として、チートやクラッキング対策、暗号スイートの適切な利用方法などもぜひ話して欲しいと思っています。またサーバーネットワークの仮想化設計事例、特に大きなゲームのシステムでどのように利用しているのかは注目度が高いと思います。

 あと最近の技術トレンドとして、サーバーレスアーキテクチャというのがあります。大手のクラウドサービスで出てきているので、これを使ったゲームサーバーの構築事例も聞きたいです。マイクロサービスを繋げるものは昔からありましたが、最近はAIやマシンラーニングもクラウドで提供されていて、高水準なコンポーネントと連携しながら作っていくことが、いわゆるサーバーを用意せずにできるようになってきました。現状で全てのゲームがサーバーレスアーキテクチャでできるとは思っていませんが、特定の分野ではできると思いますので、その辺りを話していただきたいです。

――ご自身がこういうセッションを見たいというものはありますか?

津田氏 : モーションに関するセッションをぜひ応募していただきたいです。情報が極端に少ない分野で、発表していただくとすぐ立ち見になるほど需要が高いです。モーション技術はここ10年以上、あまりイノベーションが起きていない分野でしたが、Ubisoftさんがモーションマッチングという技術を開発して、データの作り方まで完全公開されました。新世代のモーションシステムになったと言える、ブレイクスルー的な技術が出てきたので、今後もこういったものを積極的に発表していただければ、モーションシーンもさらに先に進めていけるかなと感じています。

佐藤氏 : 個人的には大きなタイトルの裏側の話を聞きたいです。自動化技術などもたくさん使っていると思いますが、外からはなかなか見えないものなので、ぜひ聞いてみたいです。みんなが同じ失敗、同じ苦労をする必要はありませんから、情報共有して欲しいですね。

――最後に、CEDECの講演を考えている方にメッセージをお願いします。

津田氏 : 私は最初にCEDECに応募した時、物理エンジンの作り方というコアな発表をしました。ずっと1人でやってきたのですが、講演の後、業界の物理エンジンプログラマーと数多く知り合いになり、コミュニティができたんです。そこで得られた情報は本当に貴重でした。ああいう情報交換がなければ、その後に物理エンジンが実際にゲームで使えるくらいタフで高機能なものになるまでにもっと長い時間がかかったと思います。情報を出すと、集まってくるんです。特に今は、VRやAIという、これからトライアンドエラーを繰り返さなければいけない技術が立ち上がっていますから、応募していただければ確実にメリットがありますと訴えたいです。

佐藤氏 : 私はゲーム会社にいたのでアプリケーションを触っていたのですが、CEDECで講演したことでネットワーク業界の知り合いも増えました。インフラ側で考えていることを聞けたり、逆にアプリケーション側が求めるネットワークはこうだと話せる場所ができたりして、自分が活動する場が増えたと感じています。ゲーム会社のネットワークエンジニアやインフラエンジニアは内気な方が多いと思いますが、CEDECに出ていただいてお話しいただけると、仕事も楽しくなると思います。

――ありがとうございました。


石田賀津男(フリージャーナリスト / http://ougi.net

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