CEDEC運営委員会インタビュー

CEDEC 2017サウンド分野インタビュー ~モバイル、VR、インタラクティブなど多彩なサウンド技術の共有を!

 8月30日から9月1日の3日間にわたりパシフィコ横浜で開催される「CEDEC(コンピュータ・エンターテイメント・デベロッパーズ・カンファレンス)2017」では、セッションの講演者を、2月1日から4月2日まで募集している。

 今回はCEDECのサウンド分野におけるトレンドや、CEDEC 2017の公募で求めるトピックなどを、運営委員会で主担当を務める増野宏之氏に伺った。


増野宏之

――まずは自己紹介をお願いします。

増野氏 : 株式会社CRI・ミドルウェアにて、サウンドミドルウェア「CRI ADX2」を担当しています。また音楽を入力するだけでテンポやBPMなどを検出できる「BEATWIZ」の開発・営業も担当しています。CEDEC運営委員会では2012年からサウンド分野を担当しています。

――CEDECのサウンド分野における最近のトレンドはありますか?

増野氏 : 数年前からスマートフォンでのアプローチが重要視されています。スマートフォンのゲームは音を出せない環境で遊ばれることが多く、不遇な立場にありました。しかし最近は携帯ゲーム機に負けないビジュアル表現が可能になり、音楽も豊かな表現が求められるようになっています。スマートフォンは音楽に特化したハードではなく、家庭用ゲーム機と同じようにはいかないことが多いため、ノウハウが求められています。

――最近はスマートフォンでも音楽ゲームが人気ですね。

増野氏 : 少し前までは、スマートフォンでそこまでコアなゲームはやらないだろうと思っていましたが、今は時代が変わってきた感じです。遅延の対策が難しく、家庭用ゲーム機にはない特殊なノウハウが必要になります。

――他に昨年までで注目された話題は何でしょうか?

増野氏 : 2016年はVRが出てきました。従来の音響技術は描画フレームに合わせて秒間60フレームでしたが、VRヘッドセットは90フレーム、120フレームといったハイフレームレートになっていますので、音も追従する必要があり、従来のオーディオの仕組みではなかなか難しいのです。また今まではサラウンドといっても平面上のものでしたが、VRでは上下の感覚も重要ですから、立体音響、頭部伝達関数などを含めたアプローチを聞きたいです。昨年は実験的な話題が多かったですが、そろそろノウハウも貯まってきているんじゃないかと思います。

――VRのほかに、CEDEC 2017で注目したい話題はありますか?

増野氏 : いくつかありますが、まず開発ツール、特にオーサリングです。最近はコンピューターの性能が上がり、複雑な音響効果がソフトウェアで記述できるようになりました。かなり重い処理で、据え置き機では今やサウンドも負荷の重いプログラムになっています。そこではオーサリングツールでどんな形で出しているのか。また万単位のセリフがあり、それが多言語対応する時のアセットをどう管理するのか。最近は物量勝負になっているところも多いので、どのようにマネージメントしたのかを聞きたいです。

――楽曲制作の点ではいかがですか?

増野氏 : 言うまでもなく、コンポーザー、作曲家における楽曲制作も重要です。最近は和を題材にしたゲームも出てきていて、尺八や三味線といった和楽器を使った収録も行われます。ほかにもアフリカなどの民族音楽の利用も盛んになっていきます。そういうものを生み出すために、作曲家としてどうだったか、演奏者のマネージメントやレコーディングがどうだったか。どちらかというと、うまくいかなかった話からノウハウを得たいです。

 再生環境の点では、最近はラウドネスが課題です。最近のゲーム機はビデオサービスも使えますが、そのボリュームのままゲームを始めたら大爆音が出るようでは問題があります。業界全体で同じくらいのレベルにしようと申し合わせるのをラウドネス規制というのですが、ゲームはユーザーの操作によってその時々で違う音が出ますので、ラウドネス制御をどのようにやったのかというノウハウは重要だと思います。テレビや映画の業界では既にやられていることなので、ゲームだけ音が大きかったり小さかったりするはもうやめようと言いたいです。

――映画業界などとの協力も考えたい部分ですね。他に注目したい話題はありますか?

増野氏 : インタラクティブミュージックですね。中でも音楽主導のもので、例えば敵を倒したところで音楽が綺麗に終わるようにするため、音楽側からゲームをコントロールするようなものです。インタラクティブというのは、残り時間が少なくなると音楽が早くなるというのも含みますから、インタラクティブミュージックという言葉だけで片付けられないほどたくさんのノウハウが隠れていると思います。これはユーザーのリッチなゲーム体験に直結する問題なので、プログラマーやデザイナー、プランナーなどにもぜひ聞いていただき、「音屋ってこういうことを考えているんだ」というのをわかって欲しいです。

増野宏之

――最後に、CEDEC 2017への応募を考えている方にメッセージをお願いします。

増野氏 : 人の前で話すのは、難しくて億劫です。しかし発表することで、自分自身がどのくらいのことがわかっていたのか、客観的に見られる貴重な機会だと思います。そしてもう1つ、「こんなちっぽけな分野のことなんか誰も聞きたくない」と思うのはやめてください。聞きたい人は世の中にいっぱいいます。私が数年前に「BEATWIZ」の元になる技術を発表した時、こんな誰も使わないような技術でも、100人以上の人が来てくれて、終わってからも質問に来られる方で長蛇の列ができました。これは技術者冥利に尽きます。

 講演者同士が触れ合える懇親会もあります。いろいろな会社の、サウンド以外の方々とも交流していただけるのはすごく楽しいことだと思います。私自身、講演して運営委員会に入ったことで、世界が変わると言っても過言ではないほど変わりました。自分が自分のためにやってきたことを共有して、新たな出会いと刺激を送りあえるというのは素晴らしいものだと思います。CEDECはそのためにあると思っているので、ぜひご応募ください。

――ありがとうございました。


石田賀津男(フリージャーナリスト / http://ougi.net

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