CEDEC2015運営委員長インタビュー ~講演者公募に関するアドバイス
CEDEC事務局では、8月26日よりパシフィコ横浜で開催される「CEDEC(コンピュータ・エンターテイメント・デベロッパーズ・カンファレンス)2015」の講演者を、3月31日まで募集している。
昨年開催された「CEDEC2014」では、236のセッションが開かれ、6,564名が来場。いずれも過去最多を記録した。講演者は基調講演などの招待者もいるが、多くは公募により採択された方々で、コンピュータエンターテイメントに携わる方が自らの経験を披露する貴重な場となっている。
今回はそのCEDECを支える運営委員会から、委員長を務める植原一充氏と、副委員長で広報を務める福田淳史氏にお時間をいただいた。CEDEC2015の講演者に応募することのメリットや、講演の採択に至るまでの裏事情、応募の際の注意点などについて伺った。講演者への応募を検討している方、また講演に興味がある方は、ぜひご一読いただきたい。
講演者の応募は誰でもOK!
——まずはCEDECの概要を教えていただけますか?
植原氏 : 元々は家庭用ゲームの大手企業や開発会社、ゲーム専門学校などを集めた団体であるCESA(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)が勉強会を開こうと始めたものです。CEDEC2015で17回目の開催となりました。近年はソーシャルゲームやモバイルアプリが盛り上がっていることもあって、それらに関係する方の参加や講演も増えてきています。家庭用ゲームに限らず、幅広いコンピュータエンターテイメントのカンファレンスになっています。
——講演者の募集をされていますが、どういった方々が講演されているのですか?
植原氏 : 講演にもいろいろあり、基調講演や招待させていただくものもあります。公募セッションは誰でもご応募いただけます。プログラマーやデザイナー、ネットワークエンジニア、サウンドクリエーター、プロデューサーやディレクターといった現場の開発者から、経営者、プラットフォームメーカーの方、さらには学生や大学教授など、幅広い方からのご応募をいただいています。
——ゲーム業界に関係する人なら誰でもいいのですか?
植原氏 : ゲーム業界というより、コンピュータエンターテイメントに関わる方ですね。コンピューターを使って面白いことをしている、娯楽を提供しているということであれば誰でも構いません。基本的にはプロの方にお願いしていますが、プロを目指している方なら学生でも構いません。
福田氏 : インタラクティブセッションという、ポスターセッションのようなもので学生や研究室で応募される方もいます。
植原氏 : 新しいデバイスや取り組み、シリアスゲーム、最先端のVRマシンなどが発表され、とても盛り上がっています。最近はいろいろな方に来ていただいていると感じます。
——例えば、私が応募してもいいのでしょうか(笑)。
植原氏 : もちろんです。いろいろなことを伝えたいという意識がおありでしたら、どしどしご応募ください。
書類はきちんと記入することが第一
——講演者の応募を委員会で受け付けた後、どのように審査されるのでしょうか?
植原氏 : まず一次審査を行います。CEDECの運営委員会には約50名の委員がおり、その中にあるプログラムワーキンググループの方々を中心に、20~30名が審査します。それぞれの専門分野を割り振り、1つの応募を数人で審査して得点とコメントを付けていきます。この時、講演者の情報は伏せてあります。著名な方からの応募があると「この人なら大丈夫だろう」という主観が入り、書類に一行しか書いていなくても通してしまうということが起こりかねません。純粋に内容だけで審査するため、このような形式でやっています。
それから2日がかりの合宿に突入します。一次審査での得点が高い順に、プロジェクターで全てのセッション情報を見ながら、1つずつ審査します。結果は1、2週間で応募者に通知します。中には応募内容だけでは合否を判定できず、追加情報を求める場合もあります。これらを経て、7月には全てのセッションの情報をWebサイトで公開できるよう進めています。
——具体的にどういう流れで審査されているのですか?
植原氏 : 書類の内容を見て、専門分野の方が意見を戦わせます。「これは業界では当たり前のことなので、話していただいてもあまり意味がないのでは」、「いや、これは新しい知見があって、こういう視点が新しいので来場者にとって有意義だ」などと議論を戦わせます。20人ほどが集まって、十数時間をかけて1つずつやっていくという、非常にハードなものです。
——倍率はどのくらいですか?
植原氏 : 年によって違いますが、例年2~3倍くらいです。
——それでもかなりの数ですね。審査を通るためのコツや注意点があれば教えてください。
植原氏 : 応募者の中に少なからずいらっしゃるのが、「何も決まっていませんが……」という方です。
——応募から講演まで半年ありますからね(笑)。
植原氏 : とはいえ会場の都合で全ての方にお話しいただくわけにはいきませんので、泣く泣く絞らなければならず、審査書類をきちんと書いていただくことが前提になります。今年は読み物として、審査書類のいい例、悪い例というのをWebサイトで公開してみました(http://cedec.cesa.or.jp/2015/koubo/example.html)。
今年狙い目の講演ジャンルやトレンドは?
——内容的に、今年のトレンドのようなものはありますか?
植原氏 : 「Oculus Rift」や「Project Morpheus」に代表されるHMDの話、またスマートフォンから、「Apple Watch」や空飛ぶドローンといったIoT(Internet of Things)、デバイス系やロボティクスの分野はとても熱くなっています。これらは今後、コンピュータエンターテイメントと密接に関わってくるだろうと強く感じます。
ビジュアルアーツだと、アニメーションですね。3DCGのアニメーションは今や手描きと比べて遜色なく、モーションキャプチャも使って動きがとても滑らかだったりもします。またストーリーテリングのところではアニメを参考にもしていますし、そういう方々の知見を取り入れたいと思っています。他にも、各担当分野で今どんな話を聞きたいのかをまとめた「今年求めているトピック」をWebサイトに掲載しています(http://cedec.cesa.or.jp/2015/koubo/field.html)。
——他の業界の方の話は刺激になりますし、広い分野からの応募を期待したいですね。
福田氏 : モバイル系の方にもっと来ていただきたいですね。CESAとJASGA(一般社団法人ソーシャルゲーム協会)も4月1日に統合となりますので。
植原氏 : モバイルでは特にネイティブアプリ系が人気ですね。その分野の方々の応募総数も増えてはいますが、まだまだ少ないと思っています。モバイルやソーシャルは若い方も多いですし、業界の若返りを図るためにも、若い方にどんどん話していただきたいですね。あとゲーム業界は男性が多いイメージがありますから、ぜひ女性の方にももっとお話しいただきたいです。
——ゲーム業界内の話題で求めているものはありますか?
植原氏 : 今年からプロダクションという分野を作りました。チーム開発の進め方について、ゲーム業界でもアジャイルやテストベース開発の進め方の話が出てきたので、独立して分野を作っています。ゲーム開発ではよくトラブルが起こり、進行が遅れたり、うまく行かずに精神的に辛くなったりと、いろんなことが起こります。どうやったらうまく進められるのかは、皆さんの強い関心になっています。
——応募から講演までの約半年間に事情が変わって、講演内容も変わることがあると思います。その辺りは、応募の際に考慮する必要はありますか?
植原氏 : この流れの早い業界で、話す内容がどんどん変わってしまうのは当然です。話せるだけの知見を持っているのであれば、その後たとえ失敗したとしても、それがなぜ失敗したのかということを話していただければ素晴らしい講演になると思います。その辺りはあまり気にせず、どしどしご応募いただければと思います。
植原氏 : あと公募セッション以外に、スポンサーセッションがあります。CEDECはスポンサーの方々にたくさん参加していただき、支えられています。有償の商業技術のアピールに、CEDECをぜひ使っていただきたいと思います。スポンサープログラムは3月末くらいに出ますので、そちらもご検討ください。
講演者だけが参加できるパーティーもあり!
——応募者への特典もあるそうですね。
植原氏 : 応募していただいた方には、基調講演の優先入場権と、パスの割引があります。CESAの会員企業以外の方はやや料金が高くなっているのですが、その分がお安くなります。あとCEDECのステッカーをプレゼントさせていただきます。
講演を採択させていただいた場合は、CEDEC2015の無料パスを進呈します。それからCEDECの1日目に、講演者限定のパーティーを開いています。講演される方は業界でアクティブに活動されている方になると思いますので、その間での交流ができるということで、毎年好評をいただいております。ぜひここで人脈を広げていただければと思います。
——最後に、応募を検討している方に向けてメッセージをお願いします。
植原氏 : CEDECで講演する最大のメリットは、人脈が広がることだと思います。名前を出して話すことで、この人はこういう考え方を持っている、この人と話してみよう、という意識付けがされると思います。飲み会やパーティーなどいろいろなところで「CEDECで話した○○さん」という形で話ができて、人脈も知識の交換も進むと思います。
講演のモチベーションとしては、「自分がやったことを喋りたい!」という気持ちがどこかにはあると思うんです。会社で秘密にしなければならない情報ももちろんあるとは思いますが、オープンにできるところはどんどんオープンにしていって、業界全体の利益になっていけばいいなというのが、我々のモチベーションです。それをメリットと感じていただければと思います。
石田賀津男(フリージャーナリスト / http://ougi.net)