CEDEC 2020 アカデミック・基盤技術分野インタビュー

分野「アカデミック・基盤技術分野」
担当者「鳴海 拓志」


――1.分野の紹介をお願いします

鳴海:アカデミック・基盤技術分野は、エンターテインメント業界からの視点では気付かない新規技術や既存技術の応用例、および、エンターテインメントコンテンツ作成の基盤となる要素技術、学術研究、企業研究の成果について取り扱う分野です。

 

――2.この分野における講演の特徴はなんですか?

鳴海:まだ既存のエンターテインメントコンテンツでは活用しきれていない新しい技術やインタラクション手法、コンテンツ作成システムなどに関する知見が得られます。また、既存のエンターテインメントコンテンツをどう評価すれば良いのかを心理学や認知科学の観点から整理して紹介したり、生理指標などを用いて評価する新しい手法の紹介などが見られる年もあります。

 

――3.昨今のトレンドはなんですか?

鳴海:この数年はVRやARが注目されてきましたが、産業的には盛り上がりが一段落してきたところかと思います。一方で、VTuber等の広がりを見ると、バーチャルキャラクター・アバターを活用するためのインタラクション技術についてはますます検討していくべきでしょう。また、視聴覚にとどまらず、触覚表現をエンターテインメントコンテンツに取り入れる際に、どのようにコンテンツに合わせて触覚をデザインすべきかというところも話題になってきています。

 

――4.トレンドを踏まえ、個人的にぜひ聞きたいトピックはありますか?

鳴海:一つは、今年の分野で求めているトピックにも設定しましたが、VR/AR/MRの次に来る技術とその活用法について聞きたいですね。さらに言うと、いろいろな技術が成熟してきた頃合いなので、そうした発展を踏まえつつ、既存のゲームの枠組みを拡張するような新しいゲームデザイン・挑戦的なゲームデザインについても、あえてアカデミック・基盤技術分野として応募していただきたいと思っています。どちらもなかなかハードルが高いトピックだと思いますが、未来を見据えて、CEDECがいろいろな挑戦の可能性を展望する機会にならないかと考えています。

 

――5.過去応募者からの反応はいかがですか?

鳴海:例年、アカデミック・基盤技術分野にはアカデミックをバックグラウンドとする研究者の方からの応募が多く見られます。そうした研究者の方からは、技術の実用の現場からの意見が非常に多く得られるということが喜ばれていますね。研究者にとって、研究開発を進める上で現場でどのようなことが求められているかを議論できる機会はそう多くないので、貴重な機会になっているのだと感じます。アカデミック・基盤技術分野の講演は聴講者からの評価も高いですね。先端的な内容の講演はすぐには産業で使えないものも多く含まれていますが、それでも未来の話や新しい可能性が知りたいというニーズは根強いのだと感じています。

 

――6.応募を考えている方へのメッセージをお願いします。

鳴海:研究者の業績としてCEDECでの発表をどう考えるべきかを悩んでいる方もいらっしゃると思います。一方で、CEDECで得られるものは大変大きいと考えています。エンターテインメントコンテンツ分野の人たちは技術に対してポジティブで、明るく楽しいフィードバックを与えてくれます。自分の研究が想定とは全く違う文脈で使ってもらえそうだったり、意外な着目点を与えてもらえたりと、論文を読んで帰ってくるフィードバックとは異なる研究上の大事な糧が得られる場です。人を楽しませたいというポジティブな目標に向かって議論してくれる、とても楽しくて有意義な場所ですので、さまざまな方にぜひ応募していただきたいと思います。また、応募される方には、講演だけでなくインタラクティブセッションも合わせて出していただくことをオススメしています。エンターテインメントコンテンツではなにより体感することが重要です。もしかすると新しいコラボレーションに繋がるかもしれません。

 

――ありがとうございました。