サウンド
プロシージャルな音ゲーつくろうぜ。-BPM解析と格闘した10年、そしてこれからの10年-
- 日時
- 9月2日(火) 11:20~12:20
- 形式
- レギュラーセッション
受講スキル | ・デジタル波形処理(オーディオパイプライン)に、深い知見のあるオーディオプログラマー |
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受講者が得られるであろう知見 | ・ユーザー任意の曲に同期する音ゲーの制作手法と、ユーザーへのわかりやすいUIの提供方法 |
セッションの内容
[1]BPM解析と格闘した10年
・2007年にリリースした[Every Extend Extra Extereme]に搭載したBPM解析機能は、非常に低速かつ低精度、さらに正答率も低かった。
・2009年にリリースした[0D Beat Drop]に実装したVLW法を用いたものは、高い精度(0.01bpm単位)かつ、高い正答率(80%以上)を実現。
・2012年にリリースした、[NAX Music Player]に実装したものは、[0D Beat Drop]比200倍の処理速度となった。
[2]BPM解析の現在
・誤検出を防ぐ測定範囲を設定し、演算方法を工夫したことにより、ついにPerfume問題が完全に解決。ビート解析プロセスからFFT演算処理を完全に分離することに成功。
・ビート間の相関係数を計算することにより、3拍子,4拍子,5拍子などの拍子解析も可能に。
・5分の曲を解析するのにかかる時間は、最近のPCでは、わずか1秒程度。
[3]BPM解析の中から生まれてきた派生技術
・ビート情報を得るということは、音楽の中で特徴のある部分だけを、絞り込んで観察することができるということである。
・膨大な演算が必要な音楽の特徴抽出を、極めて高速に処理することができ、音楽の盛り上がり、音ゲーの基本情報の自動生成,拍子解析やフレーズ解析、ボーカル抽出も可能に。
[4]これからの10年
・ビートに同期した、動的なフィルター処理の提案。(SYNCエフェクターシステム)それに加えて、楽曲の和音解析の取り組み。
・ユーザーが、3つの選択肢「遅い曲, ふつうの曲, 早い曲」の中から、1つを選ぶだけで、解析が瞬時に完了するようなシンプルなUIの提供。
・歌声のピッチ抽出と、それを使った、ハンズフリーで遊べるゲームの実現。
[5]最後に
・この分野は10年前は、だれもいない荒地だったが、現在は非常に注目されている分野となっている。
・AAAタイトルのような、莫大な開発費も必要ない。要は「ゲームアイディアだけで遊ばせる」、いわゆる「ゲームらしいゲーム」も実現できる。
・このような音ゲーに、さらに「自分の好きな曲でプレイできる!」という要素が取り入れられたら、なんと魅力的なことか!!
・40歳から始めた、この分野の研究。10年たっても、まだまだ日々新しいアイディアが生まれるし、現場でバリバリプログラムができる。
・1つの分野に傾倒することにより、他にはない、沢山のアイディアや、ユニークな成果物を生み出すことができた。
・10年後は、60歳。定年まで、まだまだ現役でオーディオプログラマー!!
講師プロフィール
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増野 宏之
株式会社・CRIミドルウェア
エンターテイメント事業推進室
室長
・広島大学理学研究科化学専攻修了
・大学在学中の1986年より、コトブキシステム→コンパイル→ズーム→サイクロンゼロ→アークシステムワークスを経て、2013年4月よりCRI・ミドルウェアに勤務。
・CEDEC2011,2012,2013にて、リアルタイムBPM解析手法/ダンスシーケンス自動生成手法/新しいボーカル抽出削除手法に関して講演。
・CEDEC AWARDS 2012にて自身のリアルタイムBPM解析手法が優秀賞を受賞。
今年ついに50歳になりますが、まだまだ現場一直線でバリバリです。音楽と英語がわかるプログラマーとして、毎日が勉強です。《講師からのメッセージ》